木版画で最も高額な買取対象作家といえば間違いなく棟方志功でしょう。
「板画」という言葉は棟方が自身の版画を指すのに用いた言葉ですが、それに従えば棟方志功は20世紀の日本美術を代表する「板画作家」です。
1903年(明治36年)に青森県で生まれ、少年時代に感動したゴッホの様になりたいと芸術家を目指し上京します。そのため棟方初期の作品として油彩画が残されております。
その後、創作版画の第一人者・川上澄生の作品に出会い版画家を目指し、独自の世界観を開花させました。当時は折しも民芸運動が起きており、柳宗悦や河井寛次郎、浜田庄司といった民芸運動の人々と交流し作品をより高みへと昇華させていきます。
棟方の作品には自身の宗教観や女性観に溢れており、生命力とエロティシズムを感じさせます。1956年(昭和31年)にはヴェネツィア・ビエンナーレ国際版画大賞を受賞し名実は国内外に轟きます。
当時の日本は高度経済成長期にあたり、棟方の作品はデパートや百貨店、画廊で高額取引されるようになります。また棟方は版画同様に肉筆画の評価も高く、「倭画」と呼ばれ現在も高額取引されております。
そのような棟方作品ですので当然贋作も多いことで知られております。2014年(平成26年)に神奈川県立近代美術館の鎌倉別館で飾られていた棟方志功の「宇宙讃(神奈雅和(かながわ)の柵)」がカラーコピーのが贋作にすり替えられていたというニュースが話題となりましたが、いかに棟方の作品に贋作が多いかのひとつの証左とも言えましょう。
現在では棟方志功作品の公式鑑定は渋谷東急百貨店内にあります棟方志功ギャラリー・棟方志功鑑定委員会にて行われております。ただ最近では鑑定委員会の鑑定シールの贋作もあり、棟方志功作品の鑑定や取引はより一層注意が必要となっております。